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同人ノウハウ用

   
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ジャッジメント7

サワディーカー!

息抜きーにたまには小説何ぞ。
リージ=ジャッジメント4の小説書き。輪廻禁止だけど天界行
裁判方法=神様がいない設定。天秤でなんたらはエジプト方面のとか色々ごっちゃ

書いたの=ちょっと前
書いた理由=文芸も同人ノウハウも同じだなあと思って面白いから題材にしてみた
同人ノウハウじゃない理由=パブーが文系なのと、4のリージと合わせたいのもあって同人ノウハウじゃなくなった
IDとか=実際に2chで適当な数字打ってみてプレビューしたものを張り付けた
周りの反応=ジャッジメントのシリーズ自体はそこそこ人気はあったが、めっちゃ身近なものをテーマにしたせいか、7に関してはビビられた。

 

パブーで何か人気本四位になった


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

7.裁判-電子の人間正行-

電子の波を泳いでたどり着いた。
彼は小説家になりたかった。
投稿を続け、見てもらうことを続け、見つけた先が、大型掲示板だった。
ここなら評価ももらえる、ここなら沢山の人が見てくれる、ここなら同じ思いの人がいる!
狂喜乱舞で固定のハンドルネームを作ったのは最初の一カ月。
一カ月過ぎれば実力差に気付き、自然と羨みから毎日固定ハンドルを外し、才能ある人たちを中傷した。
最近そいつら現れないなあ、もっと落ち込めばいいのに。
そんな矢先、彼は工事現場を散歩中に通りがかり、上から鉄板が落ちてきて押しつぶされ、あっという間に死んだ。

電子の波、知らない本名 、知らない相手、知らない作品、知らないこと、いなくなった相手。
では裁判を始めます。

「うっわ、さむう」
たどり着いた先は、まるで小説の世界。
ライトノベルにありそうな設定だな。
彼はそう思い、目の前の大きな金色の天秤を眺めた。
上から何か落ちてきて当たった気がする。
でもまあいい。きっと夢を見ているのだろうし、夢からさめれば毎日パソコンに張り付いて、けなし続ければいい。
ブログのあいつも嫌だな、謙遜してるくせに本当は自信あって投稿してるんだぜ。そういえばコテハンのあいつは、デビューしたんだっけ。あー、ムカつくムカつく。
後は自分を持ち上げれば、いい。
金色の天秤の前に立ってみた。
右手に白い扉、その前に白い本を持った女と白い翼の女、計四人。
左手に黒い本を持った黒い翼の男が計四人。天秤の上に鎌を持った男と巨大な羽をもった女。
「寒いなー、なんだよ、暖房もねぇの?夢なんだから仕方ないけど」

黒い本を持った男が、声をあげた。
「彼の名は、相沢正行。年齢は二十七。死亡原因は事故死」
「なんだなんだ、俺が死んだって何だよ、変な夢だな」
正行は体を震わせて、息をつく。息は白い。
「彼は死んでいることに気づいてないのでは?」
他の白い服の女が、正行を見て、言う。
「何だよ死んだなんて冗談じゃねぇよ、嫌な夢だな、早く覚めてくれよ」
「お黙り!」
突然天秤の上から、鋭い喝が入る。
「!怖!なにお前」
そういいかけたところで、天秤の上の鎌を持った男が、黒い本を持った男に指示をする。
「続けなさい」
「はい」
黒い本には色々なことが書かれているらしいことは、少し見えた。
「英語と日本語なら分かるんだけど、なに書いてあるの」
覗こうとやって来た正行を、黒い翼の隣の男は、軽く制した。
「邪魔すんじゃねぇ、お前は死んだんだ、死後の裁判だ」
しかし正行は分かっていない。
やはり死んだことにも気付かず、興味を持って本を取り上げようと手を伸ばした。
「え、そういう設定なの?何それ面白い」
「うるさいので黙らせなさい」
鎌を持った男は、呆れて彼を黙らされるように指示をする。
制した黒い翼の男は、軽く正行の口に向かって、人差し指を向けた。
それから一切声が出せない。出そうとしても、喉が焼かれるように声が出せない。暴れようにも、寒すぎて何もできない。
寒さに震え、正行は天秤の前まで連れて行かれた。
「えー…彼が殺した生物の数は四万、そのうち人間は、二人。直接的には殺してないのですが」
(殺した?)
正行には覚えがない。
両親は健在、死んだ祖父母は老衰だし、この前死んだ従兄弟だって病死。
(大体自宅警備員の俺が人を殺せるわけ…)
「大 学卒済みの二十七歳、この時代ではよくいるパターンですが、よくいる仕事をしない人間です。だが夢を持っていた模様。それが小説家。この時代には、作品を 発表する場がありますから、そうして夢を握る人も少なくありません。しかしそれ故に、電子の波で調子に乗りすぎた。彼は気づいていません、二人、殺したこ とに」
驚くほど自分のプロフィールを知られていることに、正行は焦りを感じる。
しかしやはり声が出ない。
「では、次は私が」
白い翼の女が、白い本を読みあげた。
「彼は、大変優秀な頭脳を持っています。両親に恵まれ、いい大学を卒業しました。しかし就職せず、そのまま。かといって、両親の手伝いくらいはしています。彼は、とても友達が多かった」
…多かった。
(そうだ、俺は友達が多かった。面白い奴とはいつもつるんで、遊んで…、あれ?)
そこで正行が気付いた。
全てが過去系になっていることに。
(…実際ここ一年であった奴何人?皆は?結婚、就職、夢を叶えて言った奴ら。俺、それで嫌になって、引きこもった)
いつからか、就職活動もうまくいかず、コミュニケーション不足から、友達をなくした。なくしていったのはいつか。
インターネットにはまりこんで、気にいらない人間の中傷を始めたあたりから。
俺は凄い奴だ、大学だってお前らと違う所でてるし、だから俺は絶対賞をとって、有名な小説家になるんだ。
そう言って…?
「お待ちを。こちらの本に書かれていることを」
黒い本を持った男は、ページをめくった。
「彼がもっとも罪深い所をあげます」
(なんだよ、俺は何もしてないって!)
寒いな、寒い。
下を向いたあたりで気づいた。
自分の服が、真っ赤に染まり、段々黒に変化しているのを。
散歩中に事故に遭って死んだと言っている。
散歩中、白いセーターを着ていた。明るめのジーンズ生地のズボン。こんな色になるのはあり得ないはずだ。
散歩中、突然黒い影が落ちてきたのだけは何とか覚えている。
着ている服はところどころ白が見える程度で、ほぼ黒と赤に染まるセーターに、悲鳴を上げようとして出来なかった。
自分の肩を抱いたその手も、乾ききってない血で赤く染まっている。
叫ぶことができないのは、単純に先程黒い翼の男に妙なことをされて、悲鳴が出せないだけ。
寒いのは、自分の血で濡れて、そこから風が入りこんでいるからだ。
「間接的にとはいえ、人を二人殺しているところです」
「どういうことですか」
白い翼の女は、疑問を投げかける。
それに対して、黒い本を持った男は、軽く頭を抱えた。
「…、読めますか?」
そう言って、隣の黒い翼の男に、本を見せる。
何度か見せられた相手は首をかしげて、さらに隣へ本を回す。
一体何が描かれているのか予測もつかないことと、自分の姿に、正行はパニックに陥った。
しかしそれを気にも止めず、彼らは話をつづけた。
「あ、え?ああ、これ、この時代特有のだな、固定ハンドルネームって奴だ。ほら、絵描きとか物書きが別の名前使うだろう。それに似たようなの。コテハンとかHNとか言われている」
なるほど、と、本を返してもらった黒い翼の男は、説明を聞いて頷いた。
「だから、そのマサ ◆3vCtYjWPfoって奴が、そいつの電子部分での名前。本名じゃない」
「ちょっと何言ってるかわからないです」
白い翼の女が、口をはさんだ。
「お前絶対知ってるだろ」
黒い翼の男がそのフレーズに、反応する。
白い翼の女は、くすくす笑い、頷いた。
「まあ、色んな時代の人がここに来てますから。知っておいて損なことはないです。面白い時代ですから、裁判の仕方もかなり風変りになりますね」
「電子?少し前の、テレビや電話の時代とは違いますか?」
他の女が質問をする。
「それを全て取り込んで別のものが生み出された、そんな時代です。一言では説明できません。時代の流れがあまりにも早すぎて、ついていけない部分が多いです。彼らなりの固定観念も簡単に変わってきます。それより裁判の続きをどうぞ」
確かに中世的な雰囲気には似合わないだろう。
困惑し続ける正行をそのままにして、話を続けた。
「すみません、私には読めませんので、代理で貴方に話していただきたい」
黒い本を持った男は、先ほど固定ハンドルネームに詳しい男に渡した。
どうやらわけのわからない文字と数字の羅列に、なんて発言すればいいか全くわかってないようだ。
「はいよ。正行、喋っていいぞ」
人差し指を彼の口の前で動かすと、正行は、喉を焼かれる痛みがなくなった。
が、体中真っ赤。すっかり言葉を失う彼に、皆の視線が集中した。
「この『大型掲示板の創作文芸板』って知ってるよな?お前が、マサ ◆3vCtYjWPfoって名前で、パソコンを使って出た所。見てて面白かったけど、顔の知らない奴と会話もできる、雑談もする」
その言葉に、正行が顔をあげた。
べっとりと血のりのついた手は、少し冷たい。
壊れた人形のように、首を縦にふる。
知っているもなにも、そこは自分のすみかだった。電子のなかでの、自分の家であった。
「知ってるなら話は早い。そこの、krs ◆fZAxfdd8JU、RED ◆bljf0KurQwは、お前のライバルだな」
言いづらい名前だな、と男は思いながら、読みあげる。
◆より前が彼にHN、◆移行の意味不明な文字列は、彼らがネットで本物ですというような記号と思えばいい。
「あ、最近来てない、のは知っているけど…?」
その二人は、ずっと正行が執着して、作品を発表すれば、他人を装って、評価を散々にして荒らしまわった。
羨ましかった。
他人を魅せる文章、穏やかな性格、中傷されても逃げない。
そんな本名も顔も何も知らない二人は、一カ月当たり前から、急にその電子の中で顔を出さなくなった。
「どうせ忙しくてやめたんだろ?」
クス、と、本を託された男は笑う。
だが目は笑っていなかった。
「その二人、自殺したんだよ」
にっこりと歯を見せて笑う黒い翼の男の言葉に、背筋が寒くなった。

しばらく、その場に言葉は流れなかった。
ようやく口を開いたのは、代理として黒い本を読みあげた男だった。
「お 前のやらかしたこと、全て書かれてある。まあ、お前だけじゃないさ。奴らを自殺に追いやったのは。krs ◆fZAxfdd8JU、まずこっちな。ブログ持ってたよな。お前はそれを知っていた。小説を投稿して、見てもらう。確かそう言うシステム。たまに日記 か。krs ◆fZAxfdd8JU。こいつの本名は、大貫玲子。女だ。詳しいことは省くが、そいつは中傷に耐えきることができなくなって、手首切って自殺した。何が 正しいか、何が自分で悪いか、何をしても人間を信じられなくなった」
「…」
「この時代でありがち、顔が見えない、住所も分からない。性別 だって分からない。性格だってまともに知らない。彼女は全てを小説に捧げて、低学歴なことも気にして、迷った矢先にお前と出会った。うん、そんなもんだ。 仕事、家庭、何もかもうまくいかなかった時期、支えだった小説に何も希望が持てなくなって、自殺したんだと」
ふむ、と彼らは頷いた。
正行は言葉が出ない。
「ですが、中傷したのは一人ではないのでしょう。彼のせいですか?」
白い翼の女は、彼をかばうようなそぶりを見せる。
本を託された男は、何度か首を横に振った。
「書かれてるそのまま出すと、こうなる。タイミングが悪かった。が、その中の一人に、正行がいた。そんくらいかな」
「気軽に意見を聞ける反面、人間の妬み、つらみ、羨望、全てが直接やってきます。疲れている時に、自身のあった作品を貶されて、耐えきれなくなった」
本を託したほうの男は、すらすら告げる。
「だからよ、直接的に人間殺したには変わりねーんだけど、こいつらも人間的に弱すぎるよな。時代と国によって全く違うとはいえ」
話を茫然と聞いていた正行は、今度は手を眺めた。
血は乾いてきて、パラパラと粉になって落ちていく。
「そんな話、あるかよ…、死んだとか、しらねぇよ…」
羨ましいだけだった。
何もかもうまくいってるような、そんな文章に、苦しみなんて書かれているはずもない。
自分より学歴も低くて、それでもそんな文章を書いていたことすら知らない。
堂々と高学歴を自慢していた自分自身の言葉のたびに、彼女がコンプレックスをいだいていたなんて知らない。
「いや、ある…」
正行は記憶を遡る。
彼女がいなくなる直前、いつものように賞賛と中傷であふれかえるブログを見て、せせら笑った。
ほら、称賛より中傷が多い。
コメントを数えて、称賛の方が少なかったことに満足を覚えた。
名前を変えて、媒体も変えて、「つまらない、読む価値もない、二度と現れるな」と、かきつづる。
自分以外にも彼女に嫉妬した人は多い。
ブログはその直後に止まった。
コメント欄のない最後の日記らしきものには、たった一言だけ書かれていた。
『諸事情により、以降更新できません』
背景が白多めの可愛らしいそのブログに、赤いその文字は妙に頭に残った。
「…え、何それ…あれ、遺書なの?」
もう書かないんだ、そう思っていたが、何かおかしいとは感じた。
でもそれを振り払った。ただただ喜んだ。ライバルが減ったことを、ただ喜んだ。
だって、彼女のころや私生活なんて全く知らないのだから。
 自分が書いた言葉が彼女の心に刺さっていたなんて全く気付かなかった。
「あともう一人の方な、こっちはお前か原因じゃないんだけど、あいつはリージ=ミリアス、ここにかつてきた男だよ。日本語も結構出来た、お前にとって外人だ」
「ん、ああ、彼ですか」
名前を聞いて、皆が騒ぎ出す。
正行にはよくわからないといった様子で、一斉に話をしだす周りを見ていた。
「リージは確かに自殺でしたね」
「そうだな、あいつ、趣味で小説書いていたっけな。だが自殺原因は別だろう?大体未発表の作品が多かったじゃないか」
リージのことを知っていることに驚いた正行は、恐怖にかられる。
「何だ、なんであいつのこと知ってるんだ、なんなんだ、何があるんだ、俺は何をした?」
人が死んだ、軽い中傷。気晴らしに書いた悪い噂、それらが重なって、人が死んだことを知った正行にとって、二人目も同じ末路をたどったことは怖くて仕方なかった。
裁かれるからとか、そういものではない。
何となくやったことが、自殺の原因につながることが、怖くして仕方なかった。
ただ、自分も死んだ事実は、認めざるを得ない。
なぜなら、この夢が覚めることもなく、全て言われていることが事実なのだから。
明晰夢にしたって、タチが悪すぎる。
寒い、ここは寒すぎる。
「リージは借金を抱えていた。それで家族と別れた。その合間合間に、そこにきていたらしいな。日本人として過ごしていたらしいが、お前もうすうす気づいていただろう。リージが趣味で書いた小説」
正行はまたも記憶を遡る。
突然現れた、その人間。
 時々文章が日本語としておかしい時があったし、日記を見てみれば、英字で書かれていた時がある。
後で分かったが、それらはもとは英字で書かれていて、彼の友人が日本語に訳していた。
日本語が不自由だとは感じたが、彼の書く小説は幻想的で、その中に人間の本音が見え隠れしていた。
 きっとこいつ、自分を追い越す。
そう思って、彼にも。
「リージのその後を知らないとすると、やはりリージとほぼ同時期に死んだのでしょうか、彼は」
羽をもった女は、手元に置かれている紙を見ながら、白い本を持った女に話しかける。
「そのようです。リージ死亡一ヵ月後のことなので」
「貴方に、リージがどうなったか教えよう」
本を託した男は、丁寧な口調で、正行に近寄った。
「彼 は、自殺して一年は経過してからここに来た。貴方がここにいるのも、死んでから随分たっただろう。彼の小説は、元妻と友人たちの手によって、書籍化され、 世界中で大ヒットを生み出した。白い本が止まらないほどの賞賛だった。彼は輪廻を自分から拒んで、ここにいる。白い扉の向こう、リージはずっと書き続けて いる。今まで裁判してきたなかで、随分と異例な例。実際、私たちも暇なときに読んでいる」
正行は、気がつけば、地面を強く踏んでいた。
悔しい、悔しい、せっかくいなくなったのに、自分が死んだ後にヒットしたなんて。
「何だよ、死んだくせに、ずるいじゃねぇか!!自殺した弱虫のくせに!」
苦々しい言葉が、腹の底から込みあげ、言葉として出てきた。
「それが貴方の本音です」
優しい声で、男は言った。
「!!」
出る杭は打たれる、打たれて打たれてそのうちいなくなる。
そうして、何人もその狭い電子の波から消した。
狭い、ということでまた気付いた。
「…狭い」
自分がいたのは、インターネットのごく片隅。
そのごく片隅で、叩いては満足してを繰り返しただけ。
それが実際どうだろう、たった狭い所で、タイミングが悪く自殺した女もいれば、別のことが原因で死んで、その後世に出て、称賛された。
「じゃあ俺はなんなんだよ、間接とはいえ殺して、引きこもってずっと書いてきて、お前らは知っているのかよ、俺がずっと努力してたこと!」
しん、と静まり返った。皆の冷たい視線が、正行に突き刺さった。
「貴方は気づいていますね?」
「何がだよ」
いらだたしげに、肩に置かれようとした手を振り払った。
 羽の生えた男は、目を伏せ、言葉を続けた。
「先ほど述べた人たちにも人生があり、彼らもまた努力というものをしていたこと。貴方達の世界では綺麗事と言われる言葉を、貴方に贈りましょう」
正行はその場にへたり込んだ。そして血まみれの手で、自分の顔を覆って笑い出した。
さすがに、皆は戸惑った。
「っは、なんだ、なんだ、皆同じじゃねーの!!バーカ、俺馬鹿だな!あーあ、何でこんな簡単なこと、気付かなかったんだろ!!」
顔が見えない相手、本音を隠す電子の波に書かれる言葉、それでも発表し続けたライバルたち。
「あー、そうかそうか、俺は本当、馬鹿だ!!そりゃ死んで当然だ!自殺に追いやってんだからな!」
ゲラゲラと壊れた笑い声が響き渡る。
「なあ、裁判って言ったけど、これって何の裁判なんだ?その扉の向こうには何があんの?もう好きにしてくれよ、いきなり死んでいきなり、あいつらの死んだ原因とか苦労とか今更知って、馬鹿みてぇ!俺って、井の中の蛙だったんだな!!」
覆う手の隙間から、涙がこぼれた。
人を殺した、他に原因が重なったが、原因の中の一人が自分。
人が死んだ、彼は死んでから真に世界中から評価された。彼の実力は本物だった。
人を殺した、何気なく書いた、羨望と嫉妬にまみれた言葉。
「小説家目指してたのにそんなことすらわかんない、馬鹿みたいだなあ。いやー、馬鹿なんだろうなあ、俺」
笑い声は段々小さくなっていく。
それを見ながら、羽をもった天秤の上の女は、指示を出した。
「では、本を天秤へ」
天秤の上に、黒い本と白い本が置かれる。派手な音を響かせて、傾いていく。
もう片方に羽を乗せると、地獄を示した。
「と、言うと、彼は地獄ですが」
「輪廻はさせるべきでしょう」
「輪廻なあ。どうする?一応反省はしてるみたいだが?」
ぼそぼそと相談を始めるが、彼らは輪廻を選んだ。
「俺、地獄行くの?」
そこに割って入った。下を向いたまま涙を流し続けていて、力なくその場で座り込んでいる。
白い翼の女は、彼の肩をたたいた。
天秤の上から本は消えてなくなる。
「残念ながら。ですが、すぐに輪廻させられるでしょう」
「そうか、そうか、輪廻か。生まれ変わったら、もっとまともなことやってやんよ。あ、そうだ。」
立ち上がり、黒い翼の男に、黒い扉の前へと連れて行かれる。
うつむいていたが、振り返ると、正行は笑った。
「REDことリージは、そっちの白い方にいるんだろ?その先に何があるか知らないけどさ、一言頼むわ」
白い翼の女は頷いた。
「ではどうぞ」
「俺、マサは、REDを応援してるってよ」
黒い扉が開かれた。真っ赤に煮えたぎる血の海。
それを眺めて、正行は頷いた。
「うっわ、熱そう。ずっと寒かったから、俺にはぴったりだな。んじゃ」
自分からそこに飛び込む正行を見た後、黒い扉は閉じられた。


「はい、マサさんですか。いましたね、懐かしいです」
リージは、花が舞い散る園にある、石で出来た机の上で、いつものように小説を書いていた。
周りに輪廻を前に駆け回る子供や、リージの小説を待つ人たちがいる。
白い翼の女は、正行の最後の言葉を、リージに告げた。
「そうですか…、応援してくれるとは嬉しいです。マサさんは怖い人だと思っていましたが、そうでもなかったんですね、本当、インターネットというのはよく分かりません!」
書きあげると、白い翼の女に紙をつきだした。
「どうぞ、新作です!生まれ変わったマサさんにも、私の遺した小説を見てもらいたいです!」





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これまでのジャッジメント

1.裁判-孤独なマイキ-
典型的善人の例。
死因・事故
2.裁判-早苗、奈々子、悠木-
男女のもつれのせいで引き起こしたヤンデレ的な話。
死因・他殺、自殺
3.裁判-英雄テフィルス-
英雄として神の加護を受けたというテフィルス。しかし神は存在しない。
死因・病死
4.裁判-物書きリージ-
物書きの彼は借金を抱え、妻子と別れて自殺した。
死因・自殺
5.裁判-魔女アフェルタ-
魔女裁判で処刑された、アフェルタ。人間の裁判と死後の裁判。
死因・火あぶり

6.裁判-無垢な子供サニャ-
八歳のサニャは、義母による虐待を受けていた。全て自分が悪いのだといわれて。
死因・虐待

7.裁判-電子の人間正行-
羨ましかった。だからネットで誹謗中傷を書き込んだ。相手のことなんて何も知らないから、気軽に出来た。
死因・事故

8.裁判-復讐者シリフ-(執筆中)
殺すか殺されるか。壊滅しかける国を救うため、医師のシリフは英雄を殺した。
死因・事故

9.裁判-約束と裏ぎりの辰之助-(執筆中)
辰之助は第二次世界大戦、生き延びるために仲間を食ったことを言えず、家族に見守られて老衰した。
死因・老衰


3と関わりのある話だが、3の主人公の死因を病死にしたので8がすげぇ面倒くさい話にしてしまった
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